友の会通信

雑 感
開館3周年を記念して開催した「元の染付—14世紀の景徳鎮窯」展、御覧になって御感想はいかがでしたでしょうか。

元の染付は第二次世界大戦後にようやくその真価が再確認され、それと同時に世界のコレクターの間で一種のブームがわき起りましたが、日本経済の高度成長期に当った昭和40年代以降、日本がその先導役をつとめてきたようです。今回の展覧会の出品は全部で55点ありましたが、そのうち7割近くがすべて近年、欧米、東南アジアなどから将来されたものであることを聞かれると、改めて日本の経済力の強大さに思いを至されることでしょう。事実、今回の展覧会はそうした日本の文化遺産の蓄積が、第二次世界大戦後いかに充実したものになったかを、国の内外に誇示するものでもありました。美術の秋を目指して来日された海外の方が、この展覧会のためにわざわざ大阪まで足を延ばして来館された例も多かったようです。中国陶磁に造詣の深いイギリス大使・ジファード卿御夫妻は、たまたま来日されていたスコットランド省大臣・ヤンガー閣下を御案内下さいました。そのほか、海外からの来賓で特記したいのは、景徳鎮陶瓷歴史博物館の劉新園氏をお迎えしたことで、世界的な名品が一堂に会していることに興奮の面もちでした。この得難い機会を捉えて研究集会を持ち、活発な意見交流を行うことが出来たのは幸いでした。

少なくとも中国陶磁に相当な知識と関心のある方々には、再び同じ規模・内容で開催は困難という好評を得た企画展でしたが、残念ながら一般の来館者は期待したほどではなく、とくに友の会会員の御来館が全会期を通じてわずかに670名と聞いた時、私は暗然たる気分におそわれざるを得ませんでした。それは友の会会員のわずか3分の1、さらに期間中の入館者、約11,000人に対してわずか6%の数字を占めるに過ぎなかったからです。この問題は、来年以降の友の会の仮題として、私もよく考えてみたいと思っています。

今年もあとわずか、どうかよい新年をお迎えになりますように─。

1985年12月15日 大阪市立東洋陶磁美術館
館長 伊藤郁太郎
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