友の会通信

美術館の舞台裏(31)
10月9日、大阪中之島中央公会堂で、東洋陶磁学会創立20周年記念講演会が開催されました。講師は学会の委員長(名古屋大学名誉教授・楢崎彰一氏)、副委員長(東京国立博物館元次長・長谷部楽爾氏、同・林屋晴三氏)を総動員し、現在考え得る限りの豪華スタッフによる講演会でした。当初、東京のみの開催予定でしたが、当館の強い要望により大阪でも実現されました。テーマはそれぞれ、日本陶磁、中国陶磁、現代陶芸とご専門の分野で、短い時間でしたが充実したお話であったように思います。

今日、陶芸ブームで陶器づくりに精を出す人は多いのですが、古陶磁の研究を目指す人は意外に少数です。その証拠の一つに、全国の大学で陶磁史の専門講座を持っているところは、まだ一、二を数えるに過ぎないことを見ても明らかです。学会も会員数が全国で800人あまり、当館の友の会会員数が約1700 人というのに比べても大きく見劣りします。一方、考古学関係となると学会の会員数は数千人となり、陶磁部門との格差の大きいことに驚きます。考古学の対象とする時代は古代が中心で、中世が一部、近世に至ってはここ数年前から漸くその対象となったばかりです。京都、大阪、堺などの近世遺跡で膨大な陶磁器片が出土しているからで、東洋陶磁学会と考古学関係の学会との間でようやく交流が活発に行えるようになって来ました。

他の多くの学会と違って、東洋陶磁学会は専門研究者だけで構成されているわけではありません。学会内部でそのことが大きく問題になったこともありました。しかし研究者だけに限りますと会員数は極めて限定され、とても学会活動を維持して行けないのです。思いきって門戸を開放してきたからこそ、20周年を迎えることも出来たのだ、とも言えましょう。学会員の特典は、春秋2回の全国規模の会合、各種研究会への参加、この分野では最も権威のある年一回の学会誌の配布などですが、むしろ会員の御支援によって学会活動が維持され、研究や国際交流の基盤が与えられているように思います。今はやりの言葉で言えばメセナ活動に類似し、それも個人単位で参加出来ることに意義があります。積極的なご入会をお願い申し上げます。詳細は、学会事務局(林屋恵子氏・ ℡03-3812-5331・月曜〜木曜)にお問い合せ下さい。

1993年12月10日 大阪市立東洋陶磁美術館
館長 伊藤郁太郎
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