友の会通信

美術館の舞台裏(16)
当館では年3回企画展を開催していますが、それはやきものを特定のテーマによって専門的にとらえ、より深い知識と理解を得て頂くためのものです。常設展と同様、企画展に何を取り上げていくかが美術館の活動のもっとも重要な部分であることは言うまでもありません。当館ではそれらの企画展の内容を記録し、また再現することにも重点を置いています。企画展の都度、小冊子ながら図録を発行していることも、そうした考えのあらわれですが、ヴィディオ番組の作成もその一環として考えています。ヴィディオに録画することによって企画展の内容が再現でき、効率の高い教育素材となるばかりでなく、図録とともにその集積は、美術館活動の歴史を形づくっていくことにもなります。

ヴィディオ番組の制作は、展示作品の中からさらに10数点の作品を選びだし、テーマに沿った展開の順序を決めることから始まります。次は撮影、これはプロの人たち、すなわち監督、カメラマン、照明、録画技師などのチームによって進められ、私たちが立ち合って作品の見所、その提示の仕方などをアドヴァイスしていきます。照明が難しく、ワンカット撮るのに数10分かかることもしばしばです。撮影されたヴィディオは数時間分もありますので専門家によって 20〜30分まで粗編集してもらいます。今度は画面を見ながら、テープに解説を吹きこみます。そのテープからシナリオを起こし、画面とシナリオの長さを調整しながら、最終的に15分番組にまとめていくのです。最後は録音、これは樋口一葉の作品朗読などで有名な幸田弘子さんにお願いしています。

以上の工程で四、五日はかかってしまいます。わずか15分の番組ながら、それにかける時間と労力は案外たいへんなものです。しかし事情の許すかぎり、当館ではヴィディオ番組の自主制作を続けていきたいと考えております。

1990年4月7日 大阪市立東洋陶磁美術館
館長 伊藤郁太郎
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