特別企画展
「蓮-清らかな東アジアのやきもの×写真家・六田知弘の眼」

概要

インドが原産地とされる蓮は、泥の中にありながらも清らかな花を咲かせ、広く東アジアの人々に愛されてきました。特に仏教の伝来とともに世に広がり、その祈りのモチーフは絵画や様々な工芸品を飾ったのみならず、吉祥文様にも取り入れられ、生活の豊かさや男女間の愛情をも象徴しています。さらに蓮は、儒教の理想を体現した「君子」にも例えられています。
本展では、東アジアのやきものに咲く蓮の文様に焦点をあて、その清らかな美しさと、そこに託された庶民的な願いを館蔵品64点によって紹介します。そして今回特に、「時」と「祈り」をキーワードに活躍中の写真家・六田知弘(むだ ともひろ)氏の蓮の写真、約50点を併せて展示し、東洋のやきものと現代写真家の作品の両面から、蓮の新たな魅力に迫ります。




開催要項

名称:
特別企画展:
「蓮-清らかな東アジアのやきもの×写真家・六田知弘の眼」
会期:
平成26年4月12日(土)~7月27日(日)
会場:
大阪市立東洋陶磁美術館 企画展示室
大阪市北区中之島1-1-26(大阪市中央公会堂東側)
・京阪中之島線「なにわ橋」駅下車すぐ
・地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」、
地下鉄堺筋線・京阪本線「北浜」各駅から約400m
休館日:
月曜日(4/28、5/5、7/21は開館)、5/7(水)、7/22(火)
開館時間:
午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
主催:
大阪市立東洋陶磁美術館、読売新聞社
観覧料:
一般600円(480円)、高大生360円(300円)
※( )内は20人以上の団体料金
※中学生以下、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名含む)、大阪市内在住の65歳以上の方(要証明)は無料
展示点数:
陶磁器64点、六田知弘氏写真約50点
同時開催:
【特集展】
「ペルシアの陶器-オリエントの輝き」
【平常展】
安宅コレクション中国・韓国陶磁、
李秉昌コレクション韓国陶磁、
日本陶磁
問い合せ:
大阪市立東洋陶磁美術館
TEL.06-6223-0055  FAX.06-6223-0057


■展示風景


主な出品作品

重文・青花蓮池魚藻文壺
(せいか れんちぎょそうもん つぼ)
元時代・14世紀
高28.2㎝、胴径33.4㎝
住友グループ寄贈(安宅コレクション)
Acc.no.10802
撮影:六田知弘



元時代に見られる丸壺で、胴の中央には蓮や水草の間をゆうゆうと泳ぐ魚が流麗な筆致で描かれています。魚藻文は元時代の陶磁器にしばしば描かれ、本作はそれを代表する作品の一つです。中国語では魚は余と発音が同じであることから余裕があるという吉祥の意味があり、また蓮池を泳ぐ魚は男女間の愛情をも象徴しています。

鉄砂虎鷺文壺
(てっしゃ とらさぎもん つぼ)
朝鮮時代・17世紀後半
高30.1㎝、胴径30.2㎝
住友グループ寄贈(安宅コレクション)
Acc.no. 20546
撮影:六田知弘



鉄の顔料による絵付けです。満開の蓮の花の上に、二羽の鷺が背を向け合って描かれています。蓮は連、鷺は路に音が通じることから、「一路連科」(科挙に連続して合格する)を意味します。胴の別面には勇猛威武を象徴する虎文や、不老不死を意味する竹文を組み合わせて描き、吉祥的な意味合いが一層強まっています。

青花辰砂蓮花文壺
(せいかしんしゃ れんかもん つぼ)
朝鮮時代・18世紀後半
高44.6㎝、胴径34.2㎝
安宅英一氏寄贈
Acc.no. 21128
撮影:六田知弘



たっぷりとした余白のなかで、蓮の清楚な茎がまっすぐに伸び、辰砂が花と蕾をきわだたせます。まさに北宋の儒学者・周茂叔(しゅう もしゅく、1017~73)が言う「花中の君子」の趣です。中国には蓮花を一輪のみ描く「一品清廉」という画題があり、やはり清廉で高潔な人格を意味しますが、本作は、儒教の理想を体現した君子の雰囲気を濃厚にたたえています。


写真:六田知弘