「大阪市立東洋陶磁美術館収蔵品画像オープンデータ」を活用した学校での美術授業の活用事例のご報告を公開いたします。鑑賞だけでなく、商品デザインや販売など幅広くご活用いただきました。授業考案・実施者である大阪府立たまがわ高等支援学校の釘貫先生より、ご報告をお寄せいただきました。ぜひご覧ください。
「大阪市立東洋陶磁美術館収蔵品画像オープンデータの授業への活用」
授業考案・実施者:大阪府立たまがわ高等支援学校 釘貫ひとみ
対象:第 2 学年 (令和6年度)
授業数 :1 クラス 10回
目的とねらい :情報社会で適切な活動を行うための知識と態度を育み、豊かな余暇活動へとつなげるため。
〈 1. オープンデータを利活用 〉
・鑑賞活動と著作権学習
大阪市立東洋陶磁美術館収蔵品画像オープンデータは、利用規約を守れば誰でも無料で利用できる高精細・高解像度のパブリックドメイン画像です。このデータを利活用し、鑑賞と著作権について下記のように学習しました。
① 鑑賞活動
まず、オープンデータ画像に親しみながら、「オープンデータを身近なグッズにデザインすること」を想像してサイトを繰り返し訪れ、興味のある作品を選び、生徒それぞれの視点で鑑賞しました。高精細な画像を通して陶磁器の美しさを見つけ出し、それを活かしたデザインを考えました。また、作品名や文様、植物などについての解説も活用し、読めない文字はiPadの読み上げ機能を使って理解を深めました。
② 著作権学習
生徒は自分たちで選んだ画像をデザイン素材として加工する過程で、オープンデータの利用条件や著作権表示の違いについて学びました。サイトに記載される「CC-BY」(クリエイティブ・コモンズ表示)マークと、「IN COPYRIGHT」マークを比較しながら、それぞれの意味を確認。さらに、パブリックドメインの図案を使った商品と、著作権のある人気キャラクター商品の図案を比較することで、著作権の違いを具体的に学習しました。
・ミュージアムグッズデザインと製品販売
次に、オープンデータをデザイン素材とし、美術館での販売を想定したグッズのデザインをデジタルで制作しました。さらに、そのグッズを令和6年11月の文化祭で展示や販売ができるように、収蔵品情報カード(収蔵品名・所蔵者・寄贈者・撮影者などを記載)を作成し、添付しました。販売した製品は完売しました。
・有田焼六寸皿の自作デザインと絵付け
11月の文化祭の後には、修学旅行で有田焼工房を訪れ、皿に絵付けをする計画があったため、生徒たちはあらかじめ旅行先のシンボル花や鳥、当地の風景などを調べ、また、オープンデータの収蔵品の絵柄などを参考に六寸皿に描く文様を自らデザインしました。そして現地工房ではデザインを元に、慣れない筆を使いながらも思いを込めて絵付けをし、「大切な思い出の一皿」を制作しました。
実際に完成した六寸皿を手に取った生徒たちは、ものづくりの楽しさや達成感を味わうと同時に、これまでオープンデータ画像で見てきた収蔵品も、実は遠い昔に先人たちが同じように手がけた陶磁器であったことに改めて気づき、より一層親しみを感じたようです。
〈 2.授業を終えて 〉
―生徒たちは、貴重な文化財をオープンデータとして活用したことで、美術館を身近に感じるとともに、文化を継承・創造・発展させながら伝える楽しさを実感しました。
大阪市立東洋陶磁美術館収蔵品画像オープンデータは、貴重な文化財の高解像度の画像がデジタル端末でも取り扱いやすいオープンデータになっているため、鑑賞学習・著作権学習・グッズや六寸皿のデザイン制作に利活用することができました。授業後のアンケートからは、生徒たちは大切に受け継がれてきた文化(作品の画像)を自らの手で活用し、発展させながら他者に伝える楽しさを実感したことがわかりました。実は授業を実施する前までは、美術館での鑑賞経験は生徒全体の1割ほどでしかありませんでしたが、授業実施後には全体の約7割が「東洋陶磁美術館に行ってみたい」と答え、本授業によって美術館への興味・関心が大幅に向上したこともうかがえました。授業の詳細および生徒の作品については下記リンク先よりご覧ください。
【釘貫先生の授業の詳細】
【生徒作品(PDF)】
【大阪府立たまがわ高等支援学校 公式インスタグラム】