友の会通信

美術館の舞台裏(18)
写真資料について触れたついでに、一般の方の館内撮影について話を進めましょう。

美術館などを訪れる人は、よく撮影禁止の掲示がしてあることにお気づきでしょう。なぜ撮影禁止なのか、理由が明らかにされていないことが多いので、一般論として考えます。

第一に、美術品の保護ということです。館内が暗いことが多いので、一般にはストロボなどがたかれますが、美術品の種類によってはこうした光線は有害と考えられます。とくに版画や浮世絵、染織など、あるいは陶磁器でも加彩(素焼きに泥絵具で彩色したもの)などは変色・褪色などの影響を受けやすいでしょう。はっきりしたデーターが出ていないので、無難を願って撮影が忌避されていることが多いようです。

第二に、撮影が鑑賞している人のさまたげになり、館内の静かな環境を保つ目的で禁止されていることがあります。

第三に、他館や個人の所蔵家から美術品をお借りして展示している場合、その方の同意を得て初めて撮影するという不文律のようなものがあります。館蔵品と寄託品とを同時に展示している場合は無断撮影はおおむね禁止されることが多いようです。

第四に、あまり表だった理由に挙げられませんが、大事な美術品を気軽に撮影されるのは気分的にそぐわないという心理が働くことです。とくに個人美術館の場合、こうした傾向は強いと思われます。

第五に、館内でスライドを販売している場合、撮影を自由にすると販売上不利益になるという経済的要素がからむこともあり得ます。

しかしながら以上のことは、たとえばストロボ撮影だけを禁じるということで、理由の大半が無くなってしまいます。撮影禁止の大きな理由は、実は別のところにあることが多いようです。それは版権の問題で、これについては次回触れることにしましょう。

1990年9月25日 大阪市立東洋陶磁美術館
館長 伊藤郁太郎
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