主な出品作品

• 

  色絵金彩「ヴィクトリア」文ティーセット

  1850年頃　
  ポット：高11.5㎝、カップ：口径13.0㎝、菓子皿：口径21.0㎝
  ヘレンド磁器美術館蔵

  1851年のロンドン万国博覧会への出品作品に、中国・清時代の粉彩磁器をお手本にしてヨーロッパ風に変化させた花蝶文を表したものがありました。ヴィクトリア女王は、文様の新鮮さと愛らしさ、鮮やかな色彩に目を奪われ、ウインザー城用にディナーセットを注文します。このディナーセットが万博で１等賞を獲得したことにより、ヘレンド窯は国際的な名声を確立することになりました。この花蝶文は、女王の名にちなみ「ヴィクトリア」文と呼ばれるようになり、今日でもヘレンド窯を代表するモチーフのひとつとなっています。このティーセットのうち、ポットの把手は木材による修復ですが、丁寧な成形と取り付け方法から、本作が長きにわたって大切に取り扱われてきたことがうかがえます。

• 

  色絵金彩「ゲデレー」文ティーセット

  1875年頃
  ポット：高12.5㎝、カップ：口径10.8㎝、盆：口径25.6×25.3㎝
  ブダペスト国立工芸美術館蔵

  白磁の器表に赤地の文様帯を設けその中に唐草を描き、白地部分には中国磁器に由来する松竹梅文を配した、たいへん華やかな絵付けのティーセットです。この文様は、フランツ・ヨーゼフ1世と妃のエリザベートのために制作された磁器の装飾モチーフです。1867年にオーストリア＝ハンガリー二重帝国が成立し、夫妻はハンガリー国王・王妃として戴冠式を挙げ、ブダペスト近郊のゲデレーにある宮殿を同国滞在時の居城としました。その宮殿備え付けの食器として採用されたのが、本作のような文様を描いた磁器類です。文様は宮殿の名にちなんで「ゲデレー」文と呼ばれ、時代が下ると、この文様を用いた様々な器形のティーセットやコーヒーセットが作られ、たいへん好まれました。

• 

  色絵金彩「ハンガリアン・ナショナル」文皿

  1896年頃
  口径25.0㎝
  個人蔵

  19世紀末のハンガリーでは、建国1000年祭に向けての準備が進められる中、民族的アイデンティティを発揚するために、ハンガリー固有の典型的な装飾文様についての研究が盛んに行われました。「ハンガリアン・ナショナル」文は、こうした流れの中で誕生したもので、陶磁器にとどまらず、建築、家具、金工、ガラス、染織などの装飾や挿絵などにも用いられました。伝統的な陶器や刺繍のモチーフなどをもとに、様式化された柘榴やチューリップ、カーネーション、菊、蔓などを様々に組み合わせて構成されています。図柄の独特な形態や色調には東洋的な要素がうかがえ、ヨーロッパの東部に位置するハンガリーの歴史的、風土的特性が強く感じられます。