特集展:
「人間国宝 濱田庄司の茶碗―堀尾幹雄コレクション」

概要

人間国宝の濱田庄司(1894~1978)の陶芸は今なお国内外で高く評価されています。濱田は東京高等工業学校窯業科(現・東京工業大学)を卒業後、京都市立陶磁器試験場に就職しました。その後、英国のセント・アイヴスにてバーナード・リーチとともに作陶に励み、ロンドンで最初の個展を行い高い評価を得ました。帰国後は、栃木県益子に居を定め、終生益子での作陶活動を続けました。1925年頃から、柳宗悦・河井寛次郎らとともに“民藝”(民衆的藝術を略した造語)運動を推進したことはよく知られています。濱田は自らの作陶においても、民藝の無名の工人たちの精神を体現しながら、生活に根ざしたやきものづくりに生涯をかけ、実用第一の健やかで堅実な作風の作品を数多く残しました。1955年には第1回重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定され、名実ともに20世紀の日本陶芸界を代表する一人となりました。
本展では、若い頃から濱田庄司の人と作品に深く魅せられ、濱田とも親交のあった故堀尾幹雄氏より当館に寄贈されたコレクションから、代表的な茶碗約20点を選んでご紹介します。堀尾コレクションの特徴の一つが、制作年代の明らかな多彩な濱田庄司の茶碗コレクションであり、その中には濱田お気に入りの作品も数多く含まれています。濱田茶碗の多彩な魅力をぜひご堪能下さい。




開催要項

名称:
特集展:
「人間国宝 濱田庄司の茶碗―堀尾幹雄コレクション」
会期:
平成25年1月12日(土)~3月31日(日)
開館時間:
午前9時30分~午後5時

※入館はいずれも閉館の30分前まで

休館日:
月曜日(1/14、2/11は開館)、1/15(火)、2/12(火)
会場:
大阪市立東洋陶磁美術館
大阪市北区中之島1-1-26 (大阪市中央公会堂東側)
・京阪中之島線「なにわ橋」駅下車すぐ
・地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」、
地下鉄堺筋線・京阪本線「北浜」各駅から約400m
主催:
大阪市立東洋陶磁美術館
料金:
一般500円(400円)、高大生300円(250円)
※( )内は20人以上の団体料金
※身体障がい者手帳、ツルのマーク付健康手帳、大阪市敬老優待乗車証などを お持ちの方、中学生以下は観覧料が無料になります。
展示点数:
約20点
同時開催:
平常展:安宅コレクション中国陶磁・韓国陶磁、
李秉昌(イ ビョンチャン)コレクション韓国陶磁、
日本陶磁、
沖コレクション鼻煙壺
問い合せ:
大阪市立東洋陶磁美術館
TEL.06-6223-0055  FAX.06-6223-0057

■作品リスト

主な出品作品

象嵌茶碗
(ぞうがん ちゃわん)
1944年秋

高8.3㎝、口径14.5cm
堀尾幹雄氏寄贈
Acc.No.32161

1969(昭和44)年に出版された『自選濱田庄司陶器集』にも掲載されている濱田庄司の茶碗を代表する作品の一つです。灰色を帯びた釉肌(ゆうはだ)は鼠志野を彷彿(ほうふつ)させ、しっとりと味わい深いものになっています。濱田庄司のトレードマークともいうべき糖黍文(とうきびもん)が白土による象嵌技法と鉄絵で効果的に表現されています。濱田の象嵌技法の作品はそれほど多くはなく、象嵌といえばむしろ濱田の弟子で、同じく人間国宝の島岡達三(1919-2007)の「縄文象嵌」が想起されます。両者の象嵌作品には、それぞれの作家としての個性の差をうかがうことができます。

藍塩釉茶碗
(あいしおぐすり ちゃわん)
1959年2月

高10.5㎝、口径14.2m
堀尾幹雄氏寄贈
Acc.No. 32106

藍の色が目に鮮やかな大ぶりの茶碗です。塩釉は15世紀頃にドイツで生まれたといわれています。濱田は欧州・米国旅行から帰国した1953年(昭和28)頃から、日本の陶芸家としては初めてこの技法を試み始めたといいます。塩釉は焼成中に窯の中に岩塩を投げ入れ、それが釉薬同様の効果を生み出すものですが、高温のため色釉としてはコバルト(藍色)、鉄(褐色、黒色)、マンガン(あずき色)などが呈色剤として用いられます。この茶碗のように素地にコバルトを塗っておくと、鮮やかな藍色の発色が得られます。貝殻を置いて焼く「貝積(かいづみ)」により、茶碗の底には貝殻の跡が付着しています。

掛分指描茶碗
(かけわけゆびがき ちゃわん)
1950年10月

高10.0㎝、口径13.2㎝
堀尾幹雄氏寄贈
Acc.No. 32173

堀尾幹雄コレクションには様々な掛分指描(かけわけゆびがき)の優品が見られます。この茶碗も掛分指描の茶碗としては最も出来の良いものといえます。漆黒の黒釉をベースに糠白(ぬかじろ)釉の白が口縁部に効果的に配され、さらに胴部には二本指による大胆な指描文様が施されています。指描により拭きとられた黒釉の下からはあらかじめ鉄泥を塗った茶褐色の胎土が表れています。伝統的なこの指描という単純な施文方法を消化して完全に自らのものとしているところに濱田の陶芸家としての力量がうかがえます。高台の削りは大胆で力強く、濱田らしい骨太の茶碗です。