開館30周年記念企画展:
「国宝 飛青磁花生と国宝 油滴天目茶碗‐伝世の名品-」
概要
大阪市立東洋陶磁美術館に所蔵する国宝2点を中心に、「唐物(からもの)」として長く伝世した作品をその付属品とともに展示いたします。12世紀後半に始まった日宋貿易によって宋時代の優れた美術品が日本に請来され、13世紀に禅僧栄西(1141~1215)によって鎌倉将軍に紹介され広まった喫茶の風習と相俟って、室町時代には中国から渡来した美術品が流行します。特に宋、元、明時代の中国の美術品は「唐物」として、足利幕府を中心に珍重されました。この美意識はその後の日本文化に大きく関わり、現在に至るまで大事に受け継がれてきました。「唐物」として伝世した名品からは、付属品によって代々の所有者がその作品に込めた思いや美意識を知ることができます。特に油滴天目茶碗に付属する天目台3点は、全て南宋時代の作品であり、日本に請来してから油滴天目茶碗に添えられたもので、当館では開館以来、初めての展示となります。
今年度から新たに自然光に近いLED照明を全館に導入しましたので、自然採光室以外の展示室でも陶磁器の釉色を更に美しくご覧いただけるようになりました。また企画展示室では免震台も設置し、低めの展示台で油滴天目茶碗の見込みや飛青磁花生などの青磁釉の美しさをご堪能いただけるようになりました。何世代にもわたって日本人に愛されてきた中国渡来の美術品「唐物」をお楽しみください。
開催要項
- 名称:
- 開館30周年記念企画展
「国宝 飛青磁花生と国宝 油滴天目茶碗‐伝世の名品-」 - 会期:
- 平成24年10月27日(土)~12月25日(火)
- 開館時間:
- 午前9時30分~午後5時
※「光のルネサンス」メインパフォーマンス期間
〔12月14日(金)~12月25日(火)〕は午後7時まで※入館はいずれも閉館の30分前まで
- 休館日:
- 月曜日(12/24は開館)
- 会場:
- 大阪市立東洋陶磁美術館 企画展示室
大阪市北区中之島1-1-26 (大阪市中央公会堂東側)
・京阪中之島線「なにわ橋」駅下車すぐ
・地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」、
地下鉄堺筋線・京阪本線「北浜」各駅から約400m - 主催:
- 大阪市立東洋陶磁美術館
- 料金:
- 一般600円(480円)、高大生360円(300円)
- ※( )内は20人以上の団体料金
※身体障がい者手帳、ツルのマーク付健康手帳、大阪市敬老優待乗車証などを お持ちの方、中学生以下は観覧料が無料になります。
- 展示点数:
- 約7点
- 同時開催:
- 特集展:「篠田博之・めぐみコレクション 東洋陶磁の魅力」
平常展:安宅コレクション中国陶磁・韓国陶磁、
李秉昌(イ ビョンチャン)コレクション韓国陶磁、
日本陶磁、
沖コレクション鼻煙壺 - 問い合せ:
- 大阪市立東洋陶磁美術館
TEL.06-6223-0055 FAX.06-6223-0057
主な出品作品
国宝 油滴天目茶碗
(ゆてきてんもく ちゃわん)
建窯
南宋時代・12~13世紀
口径:12.2cm
大阪市立東洋陶磁美術館蔵
(住友グループ寄贈) Acc.No.10633
茶碗の表面に油滴のように斑文が現れる天目を油滴天目といいます。室町時代に将軍の公的・私的空間を飾る「座敷飾り」と「唐物」について書いた『君臺觀左右帳記(くんだいかんそうちょうき)』には、将軍が使うにふさわしい重宝として、油滴天目があげられています。この茶碗はその中でも茶碗の内外に金・銀・紺の斑文がびっしりと現れた優品として知られています。付属文書には豊臣秀次・西本願寺・三井家・若狭酒井家に伝世されたとあります。しかし、天目台3点はそれぞれ有馬涼及、小堀政尹、小堀遠州などの箱書から、天目台として茶碗とは別の伝世であったことが認められます。
国宝 飛青磁花生
(とびせいじ はないけ)
龍泉窯
元時代・14世紀
高27.4cm
大阪市立東洋陶磁美術館蔵
(住友グループ寄贈)
Acc.No.10630
器表に鉄斑を散らし、その上に青磁釉を掛けたものを、日本人は「飛青磁」と称し茶具として珍重しました。この花生は玉壺春(ぎょっこしゅん)というふっくらとした胴部とひきしまった頸部の優美な姿に、舞い上がる蝶のような鉄斑が見所となっています。大坂の豪商鴻池家に伝世し、「寛政三年(1791) 道具改帳(二番蔵)」に「へ弐拾三 飛青磁」と記載されているものに当てはまると考えられます。
重要文化財 青磁鳳凰耳花生
(せいじ ほうおうおみみはないけ)
龍泉窯
南宋時代・13世紀
高28.8cm
大阪市立東洋陶磁美術館蔵
(住友グループ寄贈)Acc.No.10383
鳳凰耳花生は日本に多く伝世しています。布を打つ道具の砧に因み「砧青磁(きぬたせいじ)」としてその器形と釉色が愛されました。数ある鳳凰耳花生の中には「萬声」「千声」などの名品が知られていますが、この作品もそうした名品の一つとして丹波青山家に伝世したといわれています。