国際交流企画展「碧緑(へきりょく)の華・明代龍泉窯青磁(みんだいりゅうせんようせいじ)-大窯楓洞岩窯址(だいようふうどうがんようし)発掘成果展」

概要

龍泉窯青磁は鎌倉時代以降、日本にも数多くもたらされ、日本人になじみの深い中国陶磁の一つです。2006年、浙江省文物考古研究所、北京大学考古文博学院、龍泉青瓷博物館は龍泉大窯楓洞岩窯址の共同発掘を行い、大きな成果を得ました。この楓洞岩窯址からは、北京や台湾の故宮博物院、トルコのトプカプ宮殿やイランのアルデビル廟などに伝世する大型の皿や水注などに類する「碧緑(碧玉の緑)」の青磁片が出土したことから、ここが明時代の洪武・永楽年間に宮廷用の青磁製品を焼成した窯であることが明らかになりました。窯址からは「永楽」など紀年銘のある窯道具や「官」字銘資料も見つかっています。文献には明初に宮廷の命により「処州(当時の龍泉一帯の名称)」に御用品の青磁をつくらせたという記述があり、この楓洞岩窯址がその中心的な窯場であったことが分かります。さらに、この発掘は、これまで明時代以降に衰退したとされてきた龍泉窯の歴史をくつがえす画期的なものでもありました。
本展では近年の中国陶磁史上の重要な考古学的発見の一つであり、龍泉窯の歴史を書き換える一大発見である龍泉大窯楓洞岩窯址の発掘成果を出土品約80点により日本で初めて紹介します。

 

開催要項

名称:
国際交流企画展「碧緑(へきりょく)の華・明代龍泉窯青磁(みんだいりゅうせんようせいじ)-大窯楓洞岩窯址(だいようふうどうがんようし)発掘成果展」
会期:
平成23年9月10日(土)~12月25日(日)
開館時間:
午前9時30分~午後5時

※「光のルネサンス」メインパフォーマンス期間〔12月14日(水)~12月25日(日)〕は午後7時まで
※入館はいずれも閉館の30分前まで

休館日:
月曜日〔9/19、10/10、12/19は開館〕、9月20日(火)、
10月11日(火)
会場:
大阪市立東洋陶磁美術館 
大阪市北区中之島1-1-26 (大阪市中央公会堂東側)
・京阪中之島線「なにわ橋」駅下車すぐ
・地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」、
地下鉄堺筋線・京阪本線「北浜」各駅から約400m
主催:
大阪市立東洋陶磁美術館、浙江省文物考古研究所、
浙江省博物館、龍泉青瓷博物館
企画協力:
株式会社アサヒワールド
料金:
一般800円(640円)、高大生480円(400円)
※( )内は20人以上の団体料金
※身体障害者手帳、ツルのマーク付健康手帳、大阪市敬老優待乗車証などを お持ちの方、中学生以下は観覧料が無料になります。
展示点数:
約80点
同時開催:
特集展:「掌中(しょうちゅう)の美-沖正一郎コレクション鼻煙壺」
平常展:安宅コレクション中国陶磁・韓国陶磁、李秉昌(イ ビョンチャン)コレクション韓国陶磁、日本陶磁
問い合せ:
大阪市立東洋陶磁美術館
TEL.06-6223-0055  FAX.06-6223-0057


■ポスター
■チラシ・表
 

主な出品作品

青磁刻花蓮唐草文鉢
(せいじこっか はすからくさもん はち)
明時代・洪武年間(1368~1398)

高16.4cm 口径40.0cm 底径21.2cm
龍泉青瓷博物館蔵

中国では「大墩碗(だいとんわん)」とも呼ばれる大型の鉢です。厚づくりで、ずっしりと重みのあるものです。器の外面には上から、霊芝唐草文、蓮唐草文、「喇嘛(ラマ)式蓮弁」とも呼ばれる蓮弁文、そして高台部分は雷文がそれぞれ刻花で表されています。また、内面には菊唐草文、蓮唐草文、そして見込み部分の二重圏線内に牡丹文が刻花で表されています。このように、刻花文様で器の内外をびっしりと装飾するのは龍泉窯の洪武官器の特徴の一つといえます。たっぷりと厚く掛けられた釉薬は美しい碧緑色を呈しています。類似した器形や文様が景徳鎮珠山官窯遺址出土の洪武時期の青花磁器や釉裏紅磁器などに見られることから、当時宮廷が定めた規格により龍泉窯に宮廷用の官器を生産させたという文献記載が実証されることになりました。

青花詩銘牧牛文皿

青磁刻花折枝芙蓉文稜花盤
(せいじこっか せっしふようもん りょうかばん)
明時代・洪武年間(1368~1398)

高9.0cm 口径44.4cm 底径24.0cm
龍泉青瓷博物館蔵

口縁部および胴部を16枚の花弁状にした大型の稜花盤です。内面中央には大輪の芙蓉文が刻花で表されており、その周囲には折枝菊花文、さらに口縁部に唐草文が施されております。胎土はわずかに灰色がかった白色で、かなり厚く成形されています。また、厚く掛けられ釉薬は美しい碧緑色を呈しており、刻花の箆目(へらめ)にたまった釉薬が色彩に陰影効果を与え、文様に立体感を生み出しています。高台の畳付部分にも釉が施されており、高台内部はリング状に釉を剥いで塾餅をあてて焼造する方法がとられており、これは明初龍泉官器の特徴の一つといえます。その造形と文様は洪武器の景徳鎮官窯の青花や釉裏紅の盤とも共通するもので、龍泉洪武官器の特徴をよく示しています。

青磁刻花折枝芙蓉文稜花盤

青磁水注
(せいじ すいちゅう)
明時代・永楽年間(1403~1424)

高32.3cm 口径8.4cm 底径10.8cm
龍泉青瓷博物館

いわゆる「玉壺春瓶」に把手と注口が付いた水注で、中国では「執壺」とも呼ばれます。注口の先端部分と本体頸部には雲形状の梁を渡し補強しています。タップリと厚くかけられた釉は典型的な碧緑の美しい発色を見せ、文様の施されていない素文です。永楽官器は洪武官器のように文様をびっしりと施すもの意外に、こうした素文や比較的空間をたっぷりと開けた文様装飾が見られるのが特徴といえます。同じ器型の水注は景徳鎮官窯の青花磁器に見られ、こうした水注の形は宮廷の求めた規格であったことが分かります。

青磁水注