特別展「ルーシー・リー展-ウィーン、ロンドン、都市に生きた陶芸家」
概要
ウィーンに生まれ、ロンドンで活動した20世紀を代表する陶芸家、ルーシー・リー(1902-1995)。20世紀初頭のヨーロッパで展開した建築やデザイン、科学といった先鋭的な思潮を取り入れたルーシー・リーの作品は、没後15年を経ても色あせることなく、ますます評価を高めています。
ウィーン工業美術学校で陶芸を学び、作家としての地位を確立していたルーシー・リーは、1938年に戦争で亡命を余儀なくされると、ウィーンとは制作環境の異なるロンドンで活動を始めます。バーナード・リーチを始めとしたスタジオ・ポタリーの作家たちが活躍する英国陶芸界の中で、彼女は助手をつとめたハンス・コパーとともに、独自の作品世界を築いて行きました。シンプルかつ緊張感のある作品のフォルム、象嵌(ぞうがん)や掻落(かきおとし)に見られる独自の施文方法、そしてぬくもりのある色鮮やかな青やピンクの釉薬技法は、ルーシー・リーならではの魅力を放つものとして今も多くの人々を魅了し続けています。
没後初の本格的な回顧展となる本展では、初期ウィーン時代からロンドンでの円熟期に至る国内外の作品約200点によって創作の軌跡をたどります。
Official Site
http://www.lucie-rie.jp/
開催要項
- 名称:
- 特別展「ルーシー・リー展-ウィーン、ロンドン、都市に生きた陶芸家」
- 会期:
- 平成22年12月11日(土)~平成23年2月13日(日)
- 開館時間:
- 午前9時30分~午後5時
※平成23年2月8日(火)~2月13日(日)
午前9時30分~午後7時
※入館はそれぞれ閉館の30分前まで - 休館日:
- 月曜日(12月13日、20日、1月10日は開館)、年末年始[12月28日(火)~1月4日(火)]、 1月11日(火)
- 会場:
- 大阪市立東洋陶磁美術館
大阪市北区中之島1-1-26
・京阪中之島線「なにわ橋」駅下車すぐ
・地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」、
地下鉄堺筋線・京阪本線「北浜」各駅から約400m - 主催:
- 大阪市立東洋陶磁美術館、日本経済新聞社
- 企画:
- 東京国立近代美術館
- 後援:
- ブリティッシュ・カウンシル
- 協力:
- 日本航空
- 助成:
- 大和日英基金
- 料金:
- 一般900円(720円)、高大生540円(450円)
※( )内は20人以上の団体料金
※身体障害者手帳、ツルのマーク付健康手帳、大阪市敬老優待乗車証などをお持ちの方、中学生以下は観覧料が無料になります。
- 展示点数:
- 約200点
- 同時開催:
- 特集展:「福島サト子氏寄贈-川崎毅展」
平常展:安宅コレクション中国陶磁・韓国陶磁
李秉昌(イ ビョンチャン)コレクション韓国陶磁、日本陶磁、 沖正一郎コレクション鼻煙壺
- 問い合せ:
- 大阪市立東洋陶磁美術館
TEL.06-6223-0055 FAX.06-6223-0057 ■割引券
主な出品作品
ピンク線文鉢 1980年頃
磁器
高さ9.7センチメートル、
口径20.0センチメートル
個人蔵 Estate of the artist
撮影:上野則宏
美しいピンク色と金属質のブロンズ色のコントラストに、一条のグリーン色が加わった華やかな作品です。細く高い高台からわずかに広がり、口縁部に向けて一気に広がりを見せる器形からは、凛としたシャープさとともに上品な美しさが強く感じられます。
胴部に用いられた象嵌(ぞうがん)技法は、内外に線彫りを施し色土を埋め込んだもので、ルーシー・リーの代表的な装飾技法のひとつです1回のみの焼成の中で、土と釉薬との相性について研究を重ねてきた彼女ならではの成果と演出が見られる作品といえます。
線文円筒花器(青) 1976年頃
陶器
高さ25センチメートル
口径13センチメートル
個人蔵 Estate of the artist
Photo: Alan Tabor
細く長い首が立ち上がり、口を大きく開いた花器は、ルーシー・リーに特徴的なスタイルです。口縁部と胴部には、マンガン釉と青色の釉の間に素地の白を残したままにし、最下部を除いて細く象嵌帯を入れることで作品全体に効果的なアクセントを生み出しています。またルーシー・リーは、この作品の口の内外と肩から首にかけて、さらには高台にも掻き落し技法を用いました。これは控え目な装飾でありながら、特に口部分に引かれた放射状の線文は口の広がりを強調し、花器の内部へと視線を誘うように感じられます。
青釉鉢 1978年頃
磁器
高さ8.4センチメートル
口径18.3センチメートル
東京国立近代美術館 Estate of artist
撮影:上野則宏
口縁の直径に比べ高台が小さめに作られていますが、不安定に見えることはなく、ルーシー・リーの作品独自のバランス感覚が生み出されています。その都度調合したという独特の釉薬レシピによるマットな深い青色の釉調は均一ではなく、さまざまな変化を見せています。口縁部に覆輪(ふくりん)のようにあしらわれたマンガン釉は、適度な粘度をもたせて刷毛で塗られた後、焼成によってわずかに垂れてブロンズ色となり、口縁部の薄さに強さを与えています。