受贈記念特別展「中国工芸の精華 沖正一郎コレクション − 鼻煙壺(びえんこ)1000展」

概要

鼻煙壺とは、嗅(か)ぎタバコを入れるための小さな容器です。嗅ぎタバコは、香料などを調合した粉末状のタバコを鼻孔にすりつけたり、吸い込んだりしてその香りや刺激を楽しむものです。15世紀末にアメリカ大陸からヨーロッパへ伝えられ、17世紀には王侯貴族などのあいだで大流行しました。嗅ぎタバコの習慣は、17世紀半ば頃にヨーロッパから中国へ伝わったと考えられています。その後、清朝の宮廷で大流行し、次第に社会全般に普及していきました。当初はタバコを保管するために、ヨーロッパ式の箱形容器が使われていましたが、やがて、湿潤なアジアの気候にあわせた、密閉式の中国独自の壺形容器が生まれました。これが鼻煙壺と呼ばれるものです。
鼻煙壺は、その大部分が手のひらに入るほどの大きさで、実用品であるとともに身近な愛玩品でもありました。磁器やガラス、玉(ぎょく)、瑪瑙(めのう)、水晶、象牙、金属など各種の材料に多様な技法で精巧な装飾をしたものが作られ、美術工芸品の一ジャンルを確立しました。特に宮廷内の工房では贅(ぜい)をつくしたものが作られ、皇帝専用品のほか、貴族や外国使節への下賜品(かしひん)、贈答品としても用いられました。
この展覧会は、大阪市が鼻煙壺のコレクターとして知られる沖正一郎(おきしょういちろう)氏から、1,200点のコレクションの寄贈を受けたことを記念して行うものです。沖コレクションの鼻煙壺は、世界的にみても最大級の規模を誇るもので、各方面から注目されています。本展では材質、器形、文様など様々な視点から、中国工芸の精華ともいえる、鼻煙壺の魅力をご紹介します。

開催要項

展示点数:
約1000点
会  期:
平成20年7月19日(土)〜9月28日(日)
開館時間:
午前9時30分〜午後5時(入館は4時30分まで)
休 館 日:
月曜日(7/21、9/15は開館)、7/22(火)、9/16(火)、9/24(水)
主  催:
大阪市立東洋陶磁美術館・読売新聞大阪本社
料  金:
一  般 800円(650円)/高校・大学生 500円(350円)

※( )内は20人以上の団体料金
※身体障害者手帳、ツルのマーク付健康手帳、大阪市敬老優待乗車証などを お持ちの方、中学生以下は観覧料が無料になります。

同時開催:
特集展「古染付の魅力」
平常展 安宅コレクション中国・韓国陶磁、李秉昌コレクション韓国陶磁、日本陶磁
問い合せ:
大阪市立東洋陶磁美術館
TEL.06-6223-0055  FAX.06-6223-0057

主な出品作品

白ガラス緑被せ 蓮弁文 鼻煙壺

白ガラス緑被せ 蓮弁文 鼻煙壺
しろがらすみどりきせ れんべんもん びえんこ
清時代末・19〜20世紀
h:8.6㎝
Acc.No.53314(沖正一郎氏寄贈)
白ガラスの器体にさらに白と緑のガラスを重ねて、蓮の花弁と葉を雕琢したものです。鼻煙壺の器形に、蓮花の丸みをおびた形があった愛らしい1点です。緑ガラスの鮮やかな色彩も、効果的です。

白ガラス桃被せ 白菜形鼻煙壺

白ガラス桃被せ 白菜形鼻煙壺
しろがらすももきせ はくさいがたびえんこ
清時代末・19〜20世紀
h:7.6㎝
Acc.No.53351(沖正一郎氏寄贈)
白色ガラスの器体に桃色ガラスを重ねて、全体を白菜の形に雕琢したものです。葉の先端には緑ガラスで、虫の姿を表しています。鮮やかな桃色ガラスは金による呈色です。

粉彩 花文 鼻煙壺

粉彩 花文 鼻煙壺
ふんさい かもん びえんこ
清時代末・19〜20世紀
h:7.1㎝
Acc.No.13893(沖正一郎氏寄贈)
粉彩は、清時代の康熙・雍正年間に始まった上絵技法の一種で、白磁の表面に酸化錫を含んだ顔料で絵付けをしたものです。濃淡の表現や細い描写ができることが特徴で、本作品でも花弁や葉の表現にそれがよくうかがえます。

象牙雕琢 宝相華文 鼻煙壺セット

象牙雕琢 宝相華文 鼻煙壺セット
ぞうげちょうたく ほうそうげもん びえんこ
清時代末・19〜20世紀
h:6.6㎝
Acc.No.53704-1〜3(沖正一郎氏寄贈)
鼻煙壺に嗅ぎタバコを入れるための匙と漏斗と、鼻煙壺から取り出したタバコを入れるための小皿からなるセットです。鼻煙壺には、たいへん深い彫りで両面に、雷文、如意頭文、宝相華文などが表されています。双耳は象の頭部に作られており、異国的な雰囲気を醸し出しています。

水晶 竹節形鼻煙壺

水晶 竹節形鼻煙壺
すいしょう たけふしがた びえんこ
清時代末・19〜20世紀
h:7.6㎝
Acc.No.53655(沖正一郎氏寄贈)
鼻煙壺の本体を二連の竹節形に、蓋を筍の先端部分に作ったユニークな器形です。内部が通じていないため、それぞれに異なる風味のタバコを入れることができます。まさに愛玩品として、遊びの心にあふれた1点といえます。

瑪瑙雕琢 金魚文 鼻煙壺

瑪瑙雕琢 金魚文 鼻煙壺
めのうちょうたく きんぎょもん びえんこ
清時代末・19〜20世紀
h:8.0㎝
Acc.No.53948(沖正一郎氏寄贈)
両面に深い彫りで大きく金魚を表したものです。瑪瑙原石の色の濃淡や縞目の出方をうまく利用して水中を泳ぐ金魚の姿が生き生きと表されています。金魚は中国語の音が金玉に通じることから、財産がたまるという意味をもつ吉祥文様の一つです。