李秉昌博士記念韓国陶磁研究

李秉昌博士記念韓国陶磁研究基金の活動とその成果
2024.02.22

活動概要

1998(平成10)年、李秉昌博士より、韓国陶磁研究のための基金用として美術品の他に土地・建物の寄付があった。大阪市立東洋陶磁美術館ではその土地・建物からの収益の一部を財源として、韓国陶磁調査研究や韓国陶磁奨学・研究助成、「李秉昌博士博士記念韓国陶磁研究報告」刊行などの事業を行ってきた。これにより大阪市立東洋陶磁美術館の韓国陶磁研究は大きく進展し、その成果を展示や講座により市民や社会へ広く還元するなど、寄付者である李秉昌博士の期待に添えるような活動を継続的に展開してきた。本基金による具体的な活動の内容は以下のとおりである。

 

(1)研究活動および関連資料収集

韓国陶磁を研究する上で、韓国での研究の最新状況を把握することは必須である。とりわけ、韓国では近年窯跡を中心に盛んに考古学的発掘が進み、韓国陶磁研究は日々進展している。こうした研究の最新動向を展示活動などに反映させ、館蔵品に対する芸術的価値と学術的な知見を、市民をはじめとする観覧者に正しく伝えていくことは大阪市立東洋陶磁美術館の義務であり責任でもある。本基金での研究活動はその根幹をなすものであり、韓国陶磁史研究を行う上で欠くことのできない窯跡調査、研究機関における資料調査を中心とし、関連書籍なども必要に応じて収集している。

 

【主要研究テーマ】

2002~2004(平成14~16)年:「初期高麗青磁の研究」を中心に
2005~2010(平成17~22)年:「中期高麗青磁の研究」を中心に
2011~2023(平成23~令和4)年:「中・後期高麗青磁の研究」を中心に

 

(2)研究成果の普及等活動

韓国陶磁調査研究の成果について、さらに積極的に研究者および市民に還元するものとして、2007(平成19)年度より公開講座を開催し、国内外の第一線の研究者を招へいし、最新の研究成果について学ぶ場とし、研究者や市民の韓国陶磁に対する興味と関心を高める努力を続けている。それとともに、公開講座の発表内容などを収録した「李秉昌博士記念韓国陶磁研究報告」を計15冊刊行して、参加者などに配布してきた。

 

【李秉昌博士記念公開講座】

第1回「中世・東アジアを魅了したやきもの―12~13世紀の高麗青磁―」(2007(平成19)年1月19日)
第2回「高麗‘翡色’の秘密をさぐる」(2008(平成20)年1月31日)
第3回「康津と扶安―高麗青磁の二大生産地」(2009(平成21)年1月16日)
第4回「中世の沈没船の謎―海底から現れた高麗青磁」(2010(平成22)年11月6日)
第5回「高麗“象嵌青磁”の魅力をさぐる」(2011(平成23)年12月3日)
第6回「高麗“鉄絵青磁”の世界をさぐる」(2013(平成25)年3月9日)
第7回「高麗白磁の世界―最新の研究成果から」(2014(平成26)年1月18日)
第8回「東アジア海域と高麗青磁Ⅰ」(2015(平成27)年3月7日)
第9回「東アジア海域と高麗青磁Ⅱ」(2016(平成28)年3月5日)
第10回「北宋汝窯青磁と高麗青磁」(2017(平成29)年2月28日)
第11回「元と高麗」(2018(平成30)年3月17日)
第12回「高麗と汝窯の新発見」(2019(平成31)年1月12日)
第13回「耀州窯青磁と高麗(オンライン)」(2020(令和2)年3月14日)
第14回「高麗陶磁と磁州窯系陶器(オンライン)」(2022(令和4)年3月5日)
第15回「東アジア水中考古学の成果(オンライン)」(2023(令和5)年3月4日)

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