企画展「高麗時代の水注」

概要

水や酒などの液体を注ぐための器―水注。水注の典型的な形は、胴の上部に口が開き、胴の下部から細長い注ぎ口が伸び、その反対側に把手が付く、というものです。
高麗の王侯貴族は、この実用的な器にかぎりない魅力を感じていたようです。高麗王朝(918~1392)は貴族社会の時代であり、優雅な文化が花開き、器は塗金や銀器よりも翡色の青磁を珍重しました。水注も青磁を中心に数多く作られました。一方、高麗では仏教が栄え、そこでも水注を用いたことが高麗仏画や出土遺物からうかがえます。
中国から伝わった水注は、繁栄する仏教、また生活様式の変遷のなかで様々に形を変えながら、12世紀を中心として多彩な展開を遂げます。さらに高麗水注の色や形、文様の美しさは中国や日本でも好まれ、高級品として受容されました。それらを裏付けるかのように、中国では北京、日本では大阪や鎌倉の遺跡から高麗水注が発掘されています。
本展ではこうした高麗水注を、館蔵品を中心に約30点展示します。また高麗の絵画資料や遺跡資料のパネルを用いて、当時の貴族生活のなかで水注がどのように登場しているのかを紹介します。基本的な構造はそのままに、様々な形を見せながら今日に至るまで愛好されてきた水注。そのもっとも洗練された姿のひとつを、本展で楽しんでいただければと思います。

開催要項

名称:
企画展「高麗時代の水注」
会期:
平成22年4月10日(土)~7月25日(日)
開館時間:
午前9時30分~午後5時(入館は4時30分まで)
休館日:
月曜日(5/3、7/19は開館)、5/6(木)、7/20(火)、
会場:
大阪市立東洋陶磁美術館 企画展示室
大阪市北区中之島1-1-26(大阪市中央公会堂東側)
・京阪中之島線「なにわ橋」駅下車すぐ
・地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋」、
地下鉄堺筋線・京阪本線「北浜」各駅から約400m
主催:
大阪市立東洋陶磁美術館
料金:
一般 500円(400円)/高校・大学生 300円(250円)

※上記料金で全館の展示をご覧いただけます。
※( )内は20人以上の団体料金
※身体障害者手帳、ツルのマーク付健康手帳、大阪市敬老優待乗車証などを お持ちの方、中学生以下は観覧料が無料になります。

展示点数:
約30点
同時開催:
特集展
  「中国陶磁の美」
平常展 安宅コレクション中国・韓国陶磁、李秉昌(イ ビョンチャン)コレクション韓国陶磁、日本陶磁、沖正一郎コレクション鼻煙壺
問い合せ:
大阪市立東洋陶磁美術館
TEL.06-6223-0055  FAX.06-6223-0057

主な出品作品

青磁陽刻筍形水注

せいじようこく たけのこがたすいちゅう

高麗時代・12世紀
高: 22.5cm
Acc.No. 20401 (住友グループ寄贈)

筍形の水注で、形の力強さと写実性がまず注目されます。筍はその成長の早さから子孫繁栄を象徴しますが、胴の膨らみや注出口と把手のバランス、わずかに頭を出した形の蓋の造形などに、いまにもはち切れんばかりの生命力が満ちています。皮は一枚一枚、丁寧に浮き彫りにされ、葉脈は繊細な線彫によって表されています。中国には見られない造形で、「翡色」を象徴するような透明の灰青緑色の釉が、形や文様の美しさを際だたせています。

重要文化財

青磁象嵌童子海石榴華文水注

せいじぞうがん どうじかいせきりゅうげもん すいちゅう

高麗時代・12世紀中葉
高: 19.0cm
Acc.No. 20286 (住友グループ寄贈)

球形の胴一面に多産を意味する海石榴華文が施されています。本作は、海石榴華文の周囲に唐草の蔓と、それをよじ登る童子を配し、男子誕生への願いを込めているようです。輪郭を黒象嵌で表し、その背景を白土で埋め込む逆象嵌の技法が、文様を一層際立たせ、逆象嵌青磁の最高作の一つとして重要文化財に指定されています。また把手と注口には白泥や鉄泥で蓮の葉が丁寧に表現され、とくに取手の付け根の部分を、生き生きとした蓮の葉が柔らかく包み込んでいます。

青磁瓢形水注

せいじ ひょうけいすいちゅう

高麗時代・12世紀
高さ :27.1cm
Acc.No. 20696 (住友グループ寄贈)

瓢形水注は、瓜形とともに好んで作られた形の一つです。中国の唐から宋にかけて瓢箪形の水注や瓶がよく制作されましたが、それらに比べると、本作の流麗な曲線は高麗独自の洗練された造形美をよく表しています。全体の形に安定感があり、また把手を籐のように縒り、紐状に作っている点が変化を添えています。蓋は蓮葉形です。同形の水注が韓国国立中央博物館にありますが、そこには「金瓶重沙瓶、置酒無重軽(金瓶は沙瓶より重いが、酒を入れれば重いも軽いもない)」という詩銘が象嵌で入っています。つまり飲酒に関するものであり、本作も酒器として用いられたと考えられます。